野良箱

同人漫画サークル

モーリー·グリーン「海賊と商人の地中海 マルタ騎士団とギリシア商人の近世海洋史」

地中海海賊

リアルタイムで問題の起きている地域や勢力を扱っているため、検索避けのため/(スラッシュ)を多用しています。
急いでいる方は、

このような形式で書かれた引用の部分

だけ読めば、概要が分かるかと思います。

【概要】 
16世紀~17世紀の地中海では、自称/十/字/軍のカ/ト/リッ/ク私掠(しりゃく)団マ/ル/タ騎士団が、イ/ス/ラ/ー/ムやユ/ダ/ヤの船を襲撃し、積み荷を略奪、乗組員へ拷問し、身ぐるみを剥いで奴隷として売り飛ばしていた。当時、国家を持たなかったギリシア人の中には、イス//ラー/ム国たるオスマ/ン/ト/ル/コ帝国の臣民でありつつキ/リ/ス/ト/教/東/方/正/教/会教徒である者もいた。
海事裁判所、ロー/マ/教/皇、国家間通商協約….。新大陸争奪の時代から取り残されこれまで注目されてこなかった当時の地中海で、宗教対立とビジネスは、いかに結びついたのか。秋山晋吾 訳。  

【感想】
歴史本ですが、蔦屋書店では、「旅行」の棚にありました。

原題は、Cath/olic Pirates and Greek Marchants:A Maritime History of the Miditerraneanです。
カ/トリ/ック海/賊という言葉は、聖俗混ざっていて変に力強いですね。

この本は、既存の研究内容、定説に触れ、かつ、ある視点の欠けていることを指摘する書き方が多いので、予備知識のない私には、かなり難しかったのですが、同時に基本を押さえられそうでもありました。

ヴェネツィアとオスマン/ト/ル/コ帝国で通商協約を結んでいたため、地中海は、いかなる宗教、宗派、職業、国家の臣民でも大きな障害なく交易ができたようです。

ギリシア人の主な出身地の一つであったクレタ島は、ある時はヴェネチア領であり、またある時はオ/スマン/ト/ルコ帝国領でした。
ギリシア人は、両国にそれぞれ臣民として存在し、また行き来をする、独特な存在です。

境界を往来する曖昧な概念として論じられるギリシア人、一方、あまり説明のない、ユ/ダ/ヤ人。
後者は、専門の考察本を読まないと形が掴めなさそうです。

本書で論じられるより以前、ヴェネツィアの南にあるアンコーナの教皇は、ユ/ダ/ヤ人も含めた全ての自由な通行を保証していましたが、教皇が変わった途端に方向転換、ユ/ダ/ヤ人を火刑にしました。こういった不安定はどうして起こるのでしょうか。教皇一人の主義なのか、もっと大きな枠組みの力なのか。なお、数代後の教皇は、また、自由往来の許可をしました。

マ/ル/タ/騎士団の船は、海賊船(パイレート)ではなく私掠船(しりゃくせん・コルソ・コーサー)として扱われていました。
海賊は、法や国家の外で、自分達のために略奪をする者ですが、私掠は、戦時中、国家に許可を受けて戦闘に参加した船乗りが敵船を襲撃する行為だったようです。
しかし、別に地中海は戦争中ではありませんし、騎士団が、どこかの国家に許可証を発行してもらったわけでもありません。

もともと、聖/ヨ/ハ/ネ/騎士団はロードス島を拠点にしていたのですが、追い出され、マルタ島にて再起を図ります。資源に乏しいこの島の主産業は、伝統的に海賊行為でした。

騎士団の行為は、暴力的で残酷なものでしたが、本人達は、それを「イ/ス/ラ/ー/ム/教との永遠戦争における十/字/軍としての高貴な私掠行為」と自認しています。

一見、ヴェネツィアサイドに見える騎士団ですが、ヴェネツィアを敵視しています。なぜなら、他の国よりも、イ/ス/ラ/ー/ム/国であるオス/マン/トル/コ帝国との貿易を密にしているからです。

騎士団のマルタ船が、ヴェネツィア船であるトルニエッロ号を襲撃した際、商品を強奪しながらも、船長に(商品を失い荷主から貰い損ねる)運賃を支払っています。
この行為は、十四世紀の海事慣習法「バルセロナ法典」(コンソラート・デル・マーレ)に基づいています。

友好国の船に積まれた敵国の商品を奪った者は、その船が得たはずの運賃を支払う義務がある。

船の所属国と、積荷の所持国は分けて考えるしきたりが以前からあったのですね。
そのような法が出来るほど、微妙な事例が溢れていたということになりそうです。
しかし、バルセロナ法典の該当項目は、戦時中の決まりだったのです。
ここでまた、マルタ騎士団の永遠戦争中である十/字/軍意識が効いて来ます。
とはいえ、トルニエッロ号襲撃事件から10年後には、ヴェネチアの丸型帆船を、船ごと奪っていることが記録に残っています。
これは、バルセロナ法典からすら逸脱していました。にもかかわらず、積荷の内、キリ/スト教徒の所有物だった戦利品には運賃を支払っているから、海の法に適っているのだと主張。

国際的には非戦時中につき、法令自体が生きる状況でもないにもかかわらず、我々は法令順守しております、という態度をとりながら、しまいにはその法令外の行動をしているのに暴力行為を正当化しゴリ押す所が、単純な海賊よりやっかいですね。
本来なら、「海賊行為だから全部無効、強奪したものを返しなさい」と命令できる所、より細かいレベルで、法令に合致しているかチェックさせられるような、論点ずらしや詭弁が得意そうです。
そもそも、キ/リ/ス/ト教の船を襲ってはいけないが、ユ/ダ/ヤとイ/ス/ラ/ー/ムの船は襲って良いという偏った理論が前提にあることを忘れそうになります。

騎士団にとって、ギリシア人は敵だったのか味方だったのか。どうやら、オス/マ/ント/ル/コ臣民のギリシア人は、ト/ル/コ人とみなされていたようです。宗教と国家、どちらが優先されるのかは複雑そうでした。

ギシリア人は、キ/リ/ス/ト教徒ではありますが、カ/ト/リ/ッ/クではなく東/方/正/教/会/です。
でも、真の/カ/ト/リッ/ク/を自称してみたりします。カ/ト/リ/ッ/ク側も、自分達と同じもののラテン典礼としてギリシア人を扱ったことがあります。
国籍だけでなく宗派も迷子で、このあたりは何度読んでも理解できません。彼ら自身、その曖昧性を利用していたといいます。
賢いですね。立場をガチガチに決めてしまうと、ある側面で大変な損失を被りそうですから。

マ/ル/タ騎士団は、ギ/リシア人をト/ル/コ人だと思っている。オス/マ/ン/ト/ルコ帝国は、イ/ス/ラ/ー/ムの国だ。だから船は襲われる。しかし、ギリシア人は、キ/リ/ス/ト教徒である。
ややこしいです。
オスマ/ン/ト/ル/コ/帝国の東/方/正/教/徒コミュニティに属するギ/リ/シ/ア/人は、マルタ船の私掠で受けた被害の補償を求め、フランスなどのカ/ト/リ/ッ/ク/系キ/リ/ス/ト国領事館や教/皇に出向いて書類を書いてもらいました。
ここで強調するのは、自分達がオ/ス/マ/ン/ト/ル/コ臣民であることではなく、キ/リ/ス/ト/教徒であることです。
奪われた商品を取り戻したい、という当たり前な訴えをするために、自身の帰依する宗教を名言する必要があるというのが、根本からのずれを感じさせて面白いです。それが最善最短ルートである場合、誰でもそうするんでしょうね。ここで、キ/リ/ス/ト教徒以外だったら、ますますカ/ト/リ/ッ/ク機関を利用するのが不可能になりますし。

永久戦争というレトリックを用いたのはマ/ル/タ騎/士団/だけではありませんでした。それは、トスカーナの海洋勢力を復活させようというメディチ家直属、聖/ス/テ/ー/フ/ァ/ノ/騎/士/団です。マ/ル/タ騎士団を参考に作られたようですが、こちらも強力な私掠団になったようです。
(メディチ家は、同時に直属の海軍も作りました。軍事勢力所持の目的がマル/タとは異なっているためか、ユ/ダ/ヤに寛容でした。また、ギ/リシ/ア人をカ/ト/リ/ックの異端審問から守るなど、マ/ル/タよりも広く、自由に人を集めていたようです。)
そんな聖/ス/テ/ー/フ/ァ/ノ騎士団ですが、教/皇が許可を与え、厳粛な儀式ではじまったのに、やっていることは海賊です。キ/リ/ス/ト教や聖/書では、有効とされているのでしょうか。
各宗教の教義というのも、それにのっとっていれば誰に対してでも、どの時代においても、正しいというわけでは、決してないという点で、バルセロナ法典に近いものがあります。君らの教えではそうかもしれないけどウチじゃ違う、という状況が多発する上、教義自体をいくらでも解釈変更できそうですし。
便利ですね永久戦争。戦争状態にしておく利点があるのです。特に経済面で。

商人たちが申立てを行ったマルタの海事裁判所(トリブナーレ)は、ある国家の裁判所ではなかった。あるいは、普通の国家の裁判所ではなかった。この法廷は、教/皇に直属する国際的な軍事/修/道/会、聖/ヨ/ハ/ネ/騎/士/団が設置したものだった。

自分達で私掠をし、自分達で裁く。

マルタ島に人を集めるのは、経済のためではなく、イ/ス/ラ/ー/ムとの戦争のため、というのが建前でしたが、実際には、ヨーロッパ全域からの支援を途切れさせないためでした。また、食糧供給を完全に島外に依存していたため、食糧難の危機だったそうです。
人間、金がないのと食えないのは死にますから、シビアな理由です。

マルタ島で私掠を行うのは、騎士団だけではありません。騎士団の目を盗んで私掠を行う者もいますが、基本として、マルタの船は、私掠業務を始める前に海事裁判所で許可を受けています。そして、裁判所総長は、登録船から私掠利益10%の関税を徴収しているのです。
国家じゃないのに税まで取る騎士団。政治をしています。でもそうしないと島の暮らしが成り立たないのだとしたら、法整備やその運営などよくがんばったということなのかもしれません。
「修/道/会/組織に管理された秩序ある海賊」というのは、「生臭坊主」の対義語にして、同義語、みたいに感じられます。

「異教徒の船であっても、その船が総長や他のキ/リ/ス/ト教君主が発行した真正の通行証を携えていれば」襲撃しないこと(中略)が定められている。

異教徒でも、キ/リ/ス/ト教発行の通行証をもらえることあるのですね。ただし、オ/ス/マ/ント/ルコ帝国のスルタンが発行した通行証では襲撃を逃れられなかったそうです。帝国自体がイ/ス/ラ/ー/ムと見なされており。

裁判所には、ギリ/シ/ア人がよく申立てに現れますが、ユ/ダ/ヤ人とイ/ス/ラ/ー/ム教徒は来ません。マルタの海事法上、最初から襲撃強奪されても何一つ文句の言えない人であるからなのでしょう。キ/リ/ス/ト教からの一方的な合法なのです。

東/方/正/教会には、高位聖職者まで含めて、隠れカ/ト/リ/ックがいました。本当は、ローマに忠誠を誓っていたのだといいます。ポーランドで、東西教会の合同に成功したことを念頭に置き、カ/ト/リ/ッ/ク側から改宗を秘密にするよう要請していました。なんという駆け引き。
カト/リックに同化させることも、分化することもできる存在、東/方/正/教/会。状況や政治によって立場の変わるギリシア人にそっくりです。

東/方/正/教/会の聖/職/者一団が、ギリシア人の船から略奪を働くマルタ船を、現場で目撃したくだりがあります。マルタの船は、ギリシア船の乗員も積荷も全てキ/リ/スト教徒(東方正教会)のものだと分かっていながら奪ったのですが、聖/職/者達がやってきたので逃げたのです。

黒ローブを着こんだ正/教/聖職者の一団が海岸をこちらに向かって押し寄せてくる様子を見て、マル/タの私掠者たちは明らかに焦ったであろう。

「高位聖職者と修/道/士達の会衆」の名のもとに宣言し、船と商品が返還されるよう求めた。

文書の冒頭には「アレクサンドリア総主/教キル/リス」の文字が標題のように記され、高度に様式化された派手な署名が頁の末尾に付されている。この人物は、のちにイ/スタンブルに移ってオスマ/ン期で最も有名な総主教となる、キリロス・ルカリスである。

ここでは、彼がイスタンブルで世界総主教の冠を戴く四年前にすでに、カト/リッ/ク私掠の被害の問題に取り組んでいたこと、教皇/庁と教皇の東/方キ/リスト教/徒政策に対する最もてごわい敵対者の一人だったことを記すにとどめておこう。

派手な署名、ぜひ見たいです。この本においては、ロ/ー/マやカ/ト/リ/ックが最強に見え、次いで裁判所の権力といった感じでしたが、それより上位か互角の強キャラが、水戸黄門の印籠持って現れたようで面白かったです。本人達は大変でしょうが、映画にしたら画面映えしそうです。

オ/スマ/ント/ルコ帝国に置かれたフ/ランス領事は、ギリシア人が裁判で勝利するため助けを求めてやってきた時に、手数料を取っていました。フランスには、ギリ/シア/人を補助する命令は出されていなかったようで、ギ/リシア人に協力するのは、同じキ/リス/ト教徒だったからでもありませんでした。(イ/スラー/ム教徒も助けていた。)
また、奴隷買い戻しのために金銭を前貸ししていたのです。
フ/ラン/ス商人は、イ/スラ/ー/ム商人やユ/ダヤ商人に、有料で名義貸しをしていました。
どんな所にでもビジネスの種があるものですね。少しずる賢くも感じますが、それで、非キ/リス/ト教徒が地中海で貿易できたのも事実です。なんの見返りもなしに全ての商人を助ける義理はありませんからね。

キリスト教/徒であることを証明する文書なしに、キ/リ/ス/ト教徒である証拠を提出しなければならない時、以下の質問に答え宣誓しなければなりませんでした。

一、両親の身分、職業、慣習
二、出生地、キ/リス/ト教の教会の有無、教区司祭の名前
三、両親が洗礼を受けていたか、その子供たちに洗礼を受けさせたか
四、キリスト教からトルコ人の宗教への棄教は、その出身地で行われたのか
五、自分がキ/リ/スト教徒の両親から生まれたと証明できるキリ/ス/ト教徒が故郷にいるか
六、教区司祭からキ/リ/スト教の教義を授かったか

この頃、カ/トリ/ックと正教徒を判別することはできなかったそうです。
上記の質問の内、教区や司教を特定できれば宗派がわかりそうなものですが、偽証が可能でした。
記録に残っている史実にも関わらず、フィクション世界の架空ルールに見えます。

マルタ島には、ギリシア語の話せるだろう代理人がおり、ギリシア人を支援するたび、2%の手数料をもらえることになっていました。
騎士団の理論が圧倒的に有利である裁判に挑むため、ギリシア人にもマルタ在住の仲間がいたことになります。
対する裁判所は、マル/タ側の証人としてイ/ス/ラ/ーム教徒奴隷まで登場させています。本来は、訴訟の情報源としての利用が禁止されていました。

ギリシア人の中には、マ/ル/タ私掠者を積極的に偵察し、賠償裁判をローマで請け負うことで成功報酬100%を得ていたと自慢する者がいました。騎士団側からすると、ギ/リ/シ/ア人の姿は、不誠実なペテン師に映ったようです。

地中海を行き来する船には、書記が乗っており、帳簿や積載証明書がありました。
特に積荷の量を示した積載証明書は、私掠者にとって脅威だったため、なんとしてでも奪わなければならないものでした。
紙切れ一枚で立場が危うくなるのですから、限りなく騎士団寄りの組織である裁判所にも、正しく機能する部分があり、存在する意義があったようです。
なぜ裁判で証明書が力を持ったか。それは、略奪品と捕虜の分け前をもらえる支援者達(船に私掠用の艤装を施す業者など)に対し、私掠団が過少申告をして騙す詐欺が横行していると、バレてしまうからです。

騎/士団は、相手が明らかにキ/リス/ト教徒であり、積荷もまたキ/リス/ト教徒のものである時、乗組員へ無理やり、ユ/ダ/ヤ人だとか、イ/ス/ラ/ーム/教の積荷だなどと白状させようとしました。同胞討ちは許されないのなら、同胞じゃないという事にしてしまえという逆転の発想。
ギ/シリ/ア人は、なぜか、マ/ルタ騎士団たちが、バルセロナ法典に基づいた理論で動いていることを理解しており、自分達もキ/リ/スト教徒としてなんらかの地位をもらえるはずだと知っていましたし、騎士団が、私掠の分配でピン跳ねをしているため被襲撃船から積載証明書を提出されたくないことも把握した上で、本来、裁判に協力する役職でもないフランス領事などへ、的確に助けを求め、マル/タ島の裁判所までやってきました。
どうやらこれは、ギリ/シア人が地中海全域へ人脈を持ち、複数の土地や価値観についての知識が豊富であるからこそ出来たやり口だったようです。

ロー/マやヴ/ァティカ/ンを中心としたカ/ト/リ/ック世界において、イン/グラ/ンドやオランダは「異端」国家でした。そんなプ/ロ/テ/ス/タントと東/方/正/教会が手を組むのではないか、と恐れています。もう、ユ/ダ/ヤ教やイ/ス/ラ/ー/ム教関係ないです。

キ/リ/ス/ト教諸都市で交易するギ/リシ/ア商人に、以下のことが告げられるべきである。彼らは、異端の宗主教であるキリル[キリロス]を総主教の座から放逐するために行動すべきであり、西方の異端[プロ/テス/タント]を忌み嫌う人物がとってかわるよう手を尽くすべきである。さもなければ、彼ら[商人たち]の船と商品はキ/リス/ト教徒の戦士達によって破壊されるであろう。これまで彼らは安全であった。しかし、今後は[戦士たちの]捕虜となるだろう。

…すごい。まず、もう信仰心などなさそうな荒くれ海賊の、なんとしてでも絶対積荷と捕虜を奪うマンであるマ/ル/タ騎士団を、ちゃんとキ/リ/ス/ト教の戦士と認めている所が意外です。しかも、戦士の破壊行為を脅しにつかって異端に圧力をかけています。ヤクザというかマフィアというか。神様に関連した聖職者感がかなり薄いです。また、ギリシア人に対しては、君たちはどちらにつくのだ。もし異端ならつぶすぞ。と睨みを利かせつつ、我々カ/ト/リ/ックのために働くのなら、正/教/会の総主教を辞任に追い込んで、反プ/ロ/テ/ス/タントの新総主教を就つかせろよ、と尖兵としての工作まで扇動しています。
ギリ/シア商人もずいぶんカ/ト/リ/ックに買われていますね。その実力がありそうに見えるのでしょう。オ/スマン/トル/コ帝国にも所属している場合が多いわけですし。

以上、本編の感想でした。
同じ神から派生しただろう諸宗教、宗派で複雑なことになっていた地中海でしたが、唯一分かりやすくグローバルだった指標が、貨幣経済だったように思えます。民族、地域、国家、言語、宗教を横断しながら、同じ尺度で数値化された価値を共有しているのですから、宗教よりも早く世界を統一する単位に見えました。そのせいで更なる争いや格差などの問題を多数生み、形があってないようなものであるため、楽園の主には程遠いのですが。

この本を「旅行」の棚に置いている蔦屋書店が、改めて面白いです。「地中海」の部分で分類されたのでしょう。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2015/11/26(木) 06:56:18|
  2. 読書感想文(小説)

セブンイレブンの小冊子印刷でコピー本制作

A5/12P/モノクロ本を作りました。初めて使用しましたが、とても便利だったのでレポートを書きます。
全く同じソフトを使わなくても出来ますが、場合によってはセブンの複合機でファイルが認識されない事のあるようですので、OSやアプリ等も書いておきます。手順は、ご参考までに。
【小冊子印刷用PDFファイル制作のコツ】
・ページ数は、4の倍数。
・見開きは分け、1ページずつの形になるよう出力する。
・順番になった全てのページを、一つのPDFに結合する。
・圧縮不要。

マルチコピー機は、裏表印刷をした時に冊子の形になるよう、ページ配置を自動的に決めてくれます。
一部目は少し時間がかかりますが、それ以降はスピードアップして待たずに済みます。
【環境、ツールなど】★付きは、最短手順で使用するものです。
Win7 64bit
Comic studio EX 4.6 ★ (原稿作成)
Photoshop CS4(ページがバラ、または、トンボなしの時に使用)
Adobe Acrobat Reader(確認用)
普段お世話になっている印刷所のHPからDLしたテンプレート
Small PDF http://smallpdf.com/jp/merge-pdf(複数PDFファイル結合)
USBフラッシュメモリ ★
セブンイレブンのマルチコピー複合機 ★
ホッチキス ★
消しゴム ★
【最短の手順】(実際にはやらなかった)
1.Comicstudioで原稿制作→「トンボの内側まで」「見開きを分けて出力」「PDF形式」で書き出し。
最短書き出し

 原稿が、コミスタの「作品」単位で作られており、かつ、ページが順番に並んでいれば、この方法だけでコピー準備完了です。
 PDFファイルは、全てのページが一つに結合された状態になっています。

※コミスタの「書き出し」前に、バックアップを取った方が良いです。経験上、次の条件でソフトが落ち、最悪、ページファイルを失いました。
・何十ページも一気に書き出そうとした。→今のところ、4ページずつだと安定。
・他のアプリを立ち上げていた。
・動画を流していた。
2.PDFファイルをUSBフラッシュメモリにコピーする。
 ※記録媒体は、SDカード、CD-ROM等でも結構です。詳しくは、マルチコピー機公式サイトで。
3.セブンイレブンへ行き、マルチコピー機の「文書印刷」を選択する。
 ディスプレイの指示に従い、記憶媒体をセットする。
 「白黒」、「A4」、「小冊子印刷(右とじ・下とじ)」を選ぶ。
 必要金額の硬貨を投入して、印刷。
 念のため、最初は一部だけ、問題なさそうなら、残りの部数を刷れば良いと思います。
4.折って、ホッチキスで留める。完成。
 今回は、12ページ本であるため、3枚1セットの状態でコピー機から出てきます。
印刷したもの

 1冊分ずつまとめて折り、背表紙にあたる部分へ開いたホッチキスを当てる。
ホチキスさす

 消しゴムを下敷きにして刺した針を、指で折る。
とびだす針
針折る



【実際の手順】
 ※トンボつきorトンボ内書き出し、という発想に至らなかったため、回りくどい方法です。
 ※PDFファイルを1つに結合してからの手順は、上記と同じです。
1.Comic studioで原稿制作→「ページ全体」を「Photshop(PSD)形式」で書き出し。
書き出しウィンドウ書き出し

 「作品」内のページ順が、ネームの段階でずれていたため、全体をPDFで書き出すわけにはいきませんでした。
2.Photoshop上でトリミング
トリミング

 書き出したPSDファイルを開いて、印刷所テンプレートにコピペ、レイヤーの乗算化、トンボに合わせてトリミング、レイヤー統合。
3.PDF形式で保存
PDFでほぞn

4.12枚のPDFファイルをSmall PDFhttp://smallpdf.com/jp/merge-pdfで結合する。
ドラッグドロップ

 ページ順のおかしい箇所を引っ張って調節。
順番調整

 結合ボタンを押す。
結合ボタン

 ダウンロード、保存する。
ダウンロード

 バラバラだったPDFが結合されました。
ひとつになったPDF群

5.上記の最短手順と同じく、USBメモリに保存、セブンイレブンで小冊子印刷をして製本。

テーマ:同人活動 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/11/24(火) 05:23:33|
  2. 同人誌・オフライン

ポスター用の絵だった

北ティア3ペーパー用440

イベントを欠席するため、次回以降のポスターになるかもしれません。
  1. 2015/11/19(木) 09:19:29|
  2. カラーイラスト

コミティア114終了のご挨拶と計算ミスのお詫び

コミティア114、当サークル「野良箱」に足をお運びいただいた方、お話してくださった方、お買い上げくださった方、差し入れくださった方、本当にありがとうございました。

全種ご購入くださった方もいて大変嬉しかったのですが、足し算を間違えて200円多くいただいてしまいました
誠に申し訳ございません。お手数ですが、次回以降、どこかのイベントでお声掛けください。返金いたします。
この件でお問い合わせ等ございましたら、同人誌奥付のメールアドレスまでお願いいたします。
謝罪ラレre

テーマ:同人活動 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/11/17(火) 01:09:09|
  2. お知らせ・宣伝

「ご冗談でしょう、ファインマンさん」「困ります、ファインマンさん」感想

ファインマン書影

「ご冗談でしょう~」は、岩波現代文庫にして上下巻。「困ります~」も同文庫で一巻完結。
全て、大貫昌子さんが翻訳を担当しています。

他の邦題「ファインマンさん」シリーズは、タイトルフォーマットこそ共通ですが、ファインマン本人による作は、ここで挙げる3冊だけのようです。

ノーベル物理学賞受賞、リチャード・ファインマンによるエッセイです。
「ご冗談~」は、ある程度時系列順に並べられているため、自叙伝のように取られがちですが、本当は、もっと独立したエピソードを集めたものらしいです。

「美」や「芸術」に対する考えは度々登場します。本格的に科学方面を押さえた人でなければ説得力を持って書けないだろう内容です。

人には言わなかったが実はある理由で、僕はぜひ絵を描けるようになりたいと前から思っていたのである。言うなれば、この世界の美しさに対する感動を、何とか表現したいと思っていたのだ。(中略)この世界で外見も性質も全然異なったものが、実はその「背後」では同じ組織、同じ物理法則に支配されているのだということを考える時、人間が感じるあの気持ちも宗教感情に一脈通じるものがある。それは自然の数学的美というもの、言いかえれば内側で自然がどのように働いているかを味わうことであり、僕らが目のあたりにしている自然現象というものは、実は原子同士の複雑な内的活動の結果なのだということを悟ることでもある。


ある日面会に行くと、アーリーンは漢字の練習のまっ最中だった。そして
「あら、この書き方はちょっと間違ってるわ」
と呟いた。そこでこの「大科学者」たる僕は、よせばいいのについ口を出した。
「間違っているって、どうしてわかるんだい?字の書き方なんて、たかが人間が作りだした習慣じゃないか。自然にはどんなふうに見えるべきなんて法則はないよ。」(中略)美しい筆蹟で書くには、特別な筆のもって行き方というものがちゃんとあるのだ。決して定義することができないにもかかわらず、美にはある定まった「何か」があるのだ。定義ができないというだけで僕はこれを信じなかったわけだが、この経験のおかげで、そこには確かに「何ものか」があるということを悟ったのだった。


僕の友達に絵描きがいて(中略)一輪の花をとりあげて、「ほら見ろよ。実にきれいだろう?(中略)僕は絵描きだからこの花の美しさがわかるが、科学者の君ときた日にゃ、まず第一にこれをバラバラにしてみようとしたりするんだから、せっかくの花もてんで味気のないものになっちまうんだ」と言ったりする。(中略)彼が見ているその美しさというものは、僕を含めたあらゆる人間に通用するもののはずだし、僕にだって花の美しさはよくわかる。(中略)花の中の細胞を僕は想像できる。(中略)細胞のこみ入った活動やさまざまな過程がちゃんと存在している。(中略)科学は花の美しさにますます意味を与えこそすれ、これを半減してしまうなどとは僕にはとても信じられない。



より小さい構成単位や内部構造、目に見えない法則に対する興味が描かれています。
科学を持たない人々は、長年それを想像や手近な知識で補い体系化してきましたが、科学者も根は同じであるようです。

ファインマンは、鍵開けとパズルのマニアである上、好奇心旺盛で、おかしなイタズラをたくさんしている人でした。
謎、特に答えが必ずあるものならば、なんとしてでも解きたくなるのですね。

催眠術の実験台に自ら立候補したファインマンでしたが、なぜか術者の命令に逆らえず、火傷までしました。しかも、マッチを押し付けられているのに熱さは感じていなかったのです。
結局、そのカラクリは分からずじまいで、「催眠術にかかったらどんな気持ちになるのか」という疑問に対して、「ふしぎだった」と感じるだけでした。後の物理学賞受賞者だって、他の分野については分かるものではないのですね。ここで無理にこじつけないのが信頼できます。

ファインマンは、感覚遮断実験の被験者ともなりました。体を張る男です。
まだ自分で幻覚を見られなかった頃は、感覚遮断のためにアイソレーション・タンクを考案したジョン・リリーやその他の被験者に対し、どんなに真実らしきものを見ても、嘘だ、存在するわけではない、と釘を刺していたのですが、自分で見た「自我のあり方」妄想―僕の自我が1インチ偏っており、腰の高さまで下ろせば、それより下にある両手が両側ではなくなんと一方にあり自我は体の外に飛び出した―を、タンクから出て語ってしまったのです。45分間正気に戻ってこれなかったわけですが、1時間以内で済んでよかったですね。
ファインマンは、そのうち幻覚を見るためのタンクすらいらなくなるだろう、と考えました。
練習するに至りませんが、自室でもできそうだと。…常時この状態だと外歩かせるわけにはいかない危険度ですね。

他の章にある自身の夢観察もそうだったのですが、深みに嵌って生活が破綻する前に引き返せているので、現実に踏みとどまるバランス感覚は優れていそうです。

「僕はもう幻覚を見るためなら何でもやろうという気になってタンクに入った。」
という箇所に性格が出ています。
親鸞がどんなに五体投地を繰り返しても全然仏が見えなくて焦る場面に似ています(←フィクションだけの創作エピソードかも)。親鸞もタンク入ったら良かったのでしょうけど、手順を間違えているということで仏の道から外れそうです。

負けず嫌いであるとともに、専門分野以外でも探究心のすさまじいことが分かったのは、マヤ写本解読の件です。
グアテマラ美術館で購入した写本のコピーでは、左側に写本、右側にスペイン語の解説が印刷されていました。
ファインマンは、右側を紙で隠し、それを回答編として、左側の写本本編だけで何を書いているか当てる「ゲーム」を一人で始めたのです。
写本の内容が、地球から見た金星の会合周期と月食の周期であったことを突き止めてから、隠していたスペイン語解説を読むと、「このシンボルは神を表わす」などと、でたらめが書いてあったのです。
自力で、より正しい答えにたどり着いてしまっている所が面白いです。もしはじめから解説を鵜呑みにしていたら、マヤ人の凄さが分からない所でした。ここまで数年もかかっています。

ファインマンは、素人マヤ研究家でありながら、写本の真贋まで分かるようになり、どうせならこういう偽物を作れという原案まで出しています。

むろんこの写本もまた、何の独創性もないツギハギの偽物であることは明らかだった。
このようなニセをでっちあげる連中は、ほんとに独創的なものを作り出す勇気など持ち合わせていないのだ。何か本当に新しいものがみつかったのなら、真に異なった何ものかを含んでいるはずだ。また本当に凝った偽物なら、たとえば火星の周期のようなものを選んで、それに合う神話などをでっちあげ、これを表わす絵を描き、火星に合ったような数字もつけたす、というようなものであるべきだ。しかもしれがすぐばれてしまうようなものでなく、神秘的な「間違い」まで含む周期の倍数表などのついたものでなくては話にならない。数字だってもう少しひねったものでなくてはつまらない。そうすれば皆、「こりゃすごい!どうも火星と関係があるらしい!」などと感心することになるはずだ。しかもこの中には、理解できないような、前に人の目に触れたことのないようなものが、いくつかある方がいい。それでこそ「あっぱれな」偽物と言えるのだ。


真面目な考古学者や歴史家、科学者ならば、偽物を作ろうなんて愚かで紛らわしいことやめてくれ!検証にかかる人員の労力や費用、時間がバカにならないから!と憤慨しそうなものですが、ファインマンの場合、手の込んでいる本気の面白いニセモノをつくってみやがれ、というズレた価値観を持っています。

彼の感情は、自然や法則、美、謎解き、面白さ、で特に動きますが、自身の良心や罪悪感に関してはドライです。文章にしていないだけかもしれませんが、自分の関わった技術で人が死ぬことについて、何の手ごたえも反応もなさそうでした。

ファインマンは、ロスアラモスで原爆の研究に関わりました。原爆投下成功後、広島の被害範囲を自分のいる街に置き換え、「どうせ壊れるんだから道路や橋を作っても無駄なのに」と考えています。都市や国という単位で俯瞰し、人間の生活や精神は視界に入れていないシミュレートをしているかのようです。
職場の皆は、原爆が完成した喜びでいっぱいだったのですが、ファインマンは当時を振り返り、「考えることを止めていた」と言います。そんな中「僕らはとんでもないものを造っちまったんだ」とふさぎこんでいたのは、考えを止めなかったボブ・ウィルソンただ一人でした。
思考停止は、さまざまな感情を麻痺させるのかもしれません。しかし、そうでなければ成せない偉業もあるでしょうし、一長一短でです。

実在ということへのこだわりは大きそうです。

放射能の暖かみだ。この球こそプルトニウムだった。


これこそ人間の手で造られた新しい元素、おそらく地球の誕生直後のほんの短期間を除いては、今まで地球に存在したことのない元素なのだ。それがここにこうして隔離され、放射能を放ちながらその特性をちゃんと持って存在しているのだ。しかも僕たちがこの手で造りだしたのである。だからこそ測り知れない価値があるのだ。



最初の妻アーリーンの死後、「アーリーンの体にどのような生理的変化が起きていたのかという考えでいっぱいだった」旨述べている所は、マッドです。愛する妻をまず、物質としてとらえてます。
初めて悲しみにつつまれたのは、それから数ヵ月後、デパートのショーウィンドウを見て「アーリーンに似合いそうな服だ」と思った時です。
なお、アーリーンの重病が分かった時の苦悩などは、ちゃんと人間らしいです。

原爆に関する資料は、機密度が高いわけですが、どのように扱ったのか、という事が書かれています。
移動時は筒にして背中にくくりつける、キャビネットに南京錠のみでしかも鍵のかかったままで簡単に取り出せる、サンタフェへのスパイがいたのに誰も気付かなかった、大戦後に厳重警備の図書館に保管されるもすでに機密解除部員がコピーを持ち出し自らのオフィスに置いている、など、いまいち、厳しいのかそうでないのか分からない機密管理方法です。
流出を罰する法律や規則はないのでしょうか。

広島の原爆投下直後に飛行機へ搭乗したファインマンは、トイレに鞄を持ち込むのは狭くていやだからと、隣席のご婦人に預けてしまいました。

「実はこのカバンの中には、今話題の原爆の秘密が入っているんです。僕がトイレに行ってくる間、すみませんが預かっていただけないでしょうか?」


ただのおばさんでよかったですね。何気なく乗り合わせた一般人を装ったスパイだとか、勝手に中身開けるようなずうずうしい人だったら、大変なことになっていたでしょう。
事実を素直に述べただけなのに、嘘にしか聞こえない、というタイプの機密保持方法は面白いですけどね。

「困ります、ファインマンさん」は、チャレンジャー号爆発事故の調査に多くのページを割いています。
円形ロケットの断面がどれだけ歪むかというNASAの資料を貰ったファインマンは、いいかげんさに驚きます。
たった3箇所、60度ごとの直径しか測っていなかったのです。
本書に載った図を再現するとこんな感じです。
歪み円

ボリュームがあって事故原因や国家・NASA・事故調査委員会の力関係は、あまり理解できていませんが、報告書の「付録」になった部分は主報告の数ヶ月後に出されるから誰にも読まれない、コンピュータにゴミを入れたらゴミな結果を吐き出すという概念GIGO(ガーベージ・イン、ガーベージ・アウト)、付録と盲腸は同じ英単語で表わせること、宇宙工学用語はアルファベットによる略語が膨大にあること、などが記憶に残りました。
また、どうもNASAは、大統領の演説予定がどうであろうと、技術的安全性がいかなるものであろうと、なにがなんでも飛ばすのだ、というロスアラモスの原爆開発初期に近い熱意をもっていたのではないかという印象が述べられていました。

テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学

  1. 2015/11/16(月) 17:27:37|
  2. 読書感想文(小説)

ジャック=アンリ・ラルティーグ作品展/ファラオと大ピラミッド展他感想

写真歴史博物館 企画写真展
世界でもっとも偉大なアマチュア写真家 ジャック=アンリ・ラルティーグ作品展
in六本木フジフィルムスクエア写真歴史博物館
入場無料

FUJIFILM SQUARE 公式サイト

フランスの裕福な家庭に生まれたジャックは、写真好きの父からカメラをもらい、子供のころから写真つき日記をつけていました。
彼が69歳の時に初ブレイク。展示会ではそのうち約25枚の白黒写真が見られました。
華やかな装いに身を包んだ上流階級の女性たちや、車のレース。ベルエポックと呼ばれた時代の豊かな暮らしが生き生きと撮影されています。
全体的に、動きのありあまった構図になっています。当時のカメラは、シャッタースピードがどのくらいだったのでしょうか。
マイケルJの、ゼロ・グラビティみたいに斜めになっている写真がありましたが、長いことポーズを取ったか、または編集やなんらかの仕掛けがあったのでしょうかね。何かの風に対抗しているというキャプションのあった気がするので、本当にあんな姿勢だったのかもしれません。
ジャックの兄が半透明になっている幽霊を模した作品がありました。こういった、合成写真は、かなり昔からあるようです。他の、おそらく同時期だろう写真集でも見たことがあります。

同じ建物内で、ナショナル ジオグラフィック「地球の真実」展も開催されていたので少し見てみました。鍾乳洞の写真が迫力ありました。
TBSテレビ60周年特別企画 国立カイロ博物館 所蔵
黄金のファラオと大ピラミッド展
in六本木ヒルズ森タワー52階 森アーツセンターギャラリー
入場料 一般 当日券 1800円
休館日 2015年11月24日(火) ※この日は開いてないので注意

黄金のファラオと大ピラミッド展公式サイト

ピラミッド建設は奴隷ではなく、農民に給料を出して作らせたのではないか、という説を採用していたようです。
建設に使用されたとする道具が展示してありましたが、想像より遥かに素朴で洗練されておらず、小型でした。
縄文時代に発掘されたようなものと大差ありません。
水平を図るための道具は、後の測量にも通じそうな発想でした。
このようなアイテムでコツコツと巨大建造物を作っていったのだとしたら、本当に世紀の大工事ですね。

古代エジプト人の死生観は、紹介されていた範囲では穏やかで、「そりゃもしそうだったらいいよね」と共感できるものが多くありました。
パー…人の人格や魂、カー…生命力の概念、精霊
この二つは肉体へ宿りますが、死とともに分離し、パーは冥界に旅立っていく。
生き返るにはパーとカーを合一化しなければならない。
ピラミッドは王の復活を助けるためにあるらしいのです。内部の呪文テキストが、太陽神やオシリスの力を借り、王との合体を促します。
このピラミッド・テキストには、言葉遊びがあるというのが意外でした。同音異義や韻踏みがあるようです。
そのリズムが呪術的であるとすれば、現代のラップリリックにほんの少しだけ似ていることになります。
王の墓で洒落たことをなさる…。
びっしりと、絵や、絵のような文字の書かれた状態は、大変芸術的です。職人たちは、当時からアートや美術、装飾というつもりで作ったのでしょうか。

女性たちの装身具は、現在でも作られ売られているものと、センスが大差ありませんでした。より派手なものもありますけど。使われている宝石がおなじみのものでした。「あらこれかわいい」とよく見たら、スカラベモチーフでした。確かに糞を転がす姿が神と同一視されたとは言いますが、虫と気づいてからは、素敵なアクセサリー、という目で見られなくなりました。

書記は、高官になれるそうです。女性の高官が見当たらないことについては、地位が低かったわけではなく、男は仕事、女は家事と子育て、というように役割が違っただけであり、子を産んだ母親、特にそれが長男である場合、ファラオのごとく権力があったというようなことが書いてありました。
一夫一婦制であるため、男女で対になった像も複数あります。

壺や化粧道具が充実していました。注ぎ口がついていたり機能性もあります。
動物の形をしたシリーズでは、やけに正確な立体化となっています。

たくさんの砂岩等による像が展示されていました。等身大か少し大きいくらいでしょうか。
彫刻を担当した人、非常にレベルが高いです。目やその周りにはガラスが使われているなど質感を考慮していますし、他の材質としっかり接着できています。
また、造形自体がリアルで、大昔の人も今の人と同じ形をしていたのだと、生生しく感じることができます。
足の指など、型をとったかのようです。
人間像を作るのも上手ですが、それ以上にライオン、猿などのフォルムが安定しています。
見たものをそのまま写し取れる当時の職人には感服します。

漆喰のヒエログリフは、主線の色が場所によって違っていました。
色や面ではなく、まず線でりんかくを取るところが、西洋より東洋、日本の絵に通じます。
文字とはいえ、鳥の形だったりするのですが、そのシルエットが、単純化された鳥として大変バランスがよいです。
彫りこむタイプの文字は、その凹凸により影ができるため、線に強弱が感じられます。
計算しているのか不明ですが、一定の箇所だけ線を太くするフォントのようで、よくできています。

ミイラは、魂にあたるもの、パーなどが戻ってきた時、現世に体がないと困るから生み出された技術のようです。
死者は、まず鳥となり、棺のそば、墓にあらかじめ内蔵された偽扉から冥界に旅立ち永遠に生きるのだといいます。
死は新たな生だということです。本当にそういう仕組みになっていたら嬉しいんですけどね。死んでからが本番で。

ミイラを入れるための木棺や、ミイラカバーには、細かい文字や絵がびっしり刻まれ、これまたアートとして高い水準になっています。彩色もされてます。棺の中には死者が納まった時に翼を持つような柄になっています。
副葬品なども、みんな、来世に持っていくため入れてあるようです。

王や高官だけでなく、パンやビールを作る人々の像がありました。生活の一場面を切り取っているものも興味深かったです。
生地を伸ばしている途中など、数千年、人間のやることは変わりません。目は二つ、鼻はひとつ、耳と口があって、足の指は片側五本です。(もちろん何らかの理由でそうではない人もいますが、基本形の話です。)

なぜ太陽神を崇めるか。それは、沈んではまた昇りそれを繰り返すという意味で、循環する永続性を見出したためのようです。
死後永遠に航海を続けるといわれる「太陽の船」復元プロジェクトとして、模型がありました。
しかし、国自体が衰えてくると、もう、永続性が見いだされなくなり、王や神の力も求心力が落ちていったようです。
いつまでも続くものはないんですね。
王達は、時代によって扱いが変わります。一時は、現人神にまでなっています。太陽神と同一視されたこともあります。
途中から、太陽神の息子という考えが現れ、それがオーソドックスだった時期があるようです。

黄金の仮面は光り輝き、おそらく人の顔より少し大きかったです。

図録やグッズ売り場には、メジェド様ガチャガチャも設置してありました。

鑑賞後、同フロアのミュージアム カフェ&レストラン ザ・サン&ザ・ムーンにて、本展示とのコラボメニュー「ファラオが愛した食文化のピラミッドカレー」を食べました。

ピラミッド型のごはん

十種類以上のスパイスを使っているということですが、日本人好みの食べやすい味ですし、辛くなかったです。
鶏と茄子の串刺し、オクラのトマト煮、ひよこ豆のコロッケと、味、栄養のバランスがよさそうでした。
ピラミッド型のターメリックライスもパクパクいけました。
私は、小さいSサイズにしました。それだとお値段1490円。
安くはないですが、地上52階のレストランで、美術館のおまけということになれば、こういう価格設定にもなるでしょう。
記念に食べて損はないと思いました。

ちなみに、一度も外を見なかったため、52階にいた実感がわきませんでした。予約すれば、窓側の席が取れるのかもしれません。
また、別途、展望台という楽しみ方もあるでしょう。
エレベータは、速く、すぐ着く割に、上昇も下降も負担を感じませんでした。ただ、私を含め数名が、耳の痛みなど違和感を訴えていました。
高度が変わることによる気圧の変化でしょうか。すぐ直るので心配はしなくてよいですが、これにより唯一、高層ビルにいると自覚できたようなものです。
反対に言えば、高所恐怖症の人でも見に行ける美術館ということになりそうです。

テーマ:展示会、イベントの情報 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2015/11/15(日) 01:45:48|
  2. 日記

2015/11/15 コミティア114に参加します


創作・オリジナルオンリー同人即売会「COMITIA114」へ参加します。
頒布物の形態は、全て漫画です。

tia banner

【日時】2015年11月15日(日曜日)11:00~16:00
【場所】有明・東京ビッグサイト東2・3ホール
【スペースNo.】 P30b 
【サークル名】野良箱
【サークルカット】
norabako114440.jpg

【頒布物】
《新刊》
1種
tia114新刊表紙
「日本語を覚えない父」300円
A5/28P/オンデマンド印刷/フルカラー表紙
外国人の父とその息子は、同居しているが言葉が通じない。異国間親子コメディ。
114新刊サンプル


《既刊》
9種
basya01_44440.jpg
「マシカの馬車」400円 前回のコミティア113で発行
※ティアズマガジンP&R掲載
A5/44P/オンデマンド印刷/フルカラー表紙
仕事帰り、馬車に乗り、高速道路のETCゲートを通過したら、そこは憧れの武道館ステージだった。
SFファンタジー短編読みきり。
馬車0004


剥ぐ知能表紙440
「剥ぐ知能」500円 6/28北海道COMITIA2発行
A5/60P/オンデマンド印刷/フルカラー表紙
人工知能搭載型自律歩行ロボット「ラレ」を開発中、誤って落としてしまう。幸い外装が剥がれただけで済んだが…。
無表情院生×グラサン担当教官+小型AIロボのラブコメ。

食べられる通貨250
「食べられる通貨」200円
A5/20P/オンデマンド印刷/モノクロ表紙
大網樹で働いた少年達は、違法物持込みのため街の門番に殴られる。
美少年と骨と回転塔のSFファンタジー。微BL。

ティア新刊サイド
「最新文化教育係」400円
A5/40P/オンデマンド印刷/フルカラー表紙/タイトル箔押し
王子様に大衆芸術を学ばせる為、若い乙女がお城に召かれる。メルヘンなおとぎ話。
ウザめが表紙ブログ用
「ウザ男と眼鏡」300円 
A5/28P/オンデマンド印刷/フルカラー表紙
男子高校生二人がどうでもいい会話をするショートショートギャグ漫画。
パペット表紙ブログ用
「パペット浄瑠璃」200円 
A5/20P/オンデマンド印刷/フルカラー表紙
黒子を引き連れた少年と腹話術人形を操る少女の傀儡4コマギャグ。
再録表紙ブログ用
「再録短編集 野良箱2008-2009」1000円 
A5/172P/オンデマンド印刷/フルカラー表紙
以前コミティアで発行した同人誌の再録本。
読みきり漫画「スパルタな姪と二人の叔父」「幸福の沸点」「ワンデイ使い捨て」「虐待専用ウサギ」「GUN MeDICINe」「報われない子供」を収録
野良猫技師
「野良猫技師」1000円
B5/134P/オフセット印刷/フルカラー表紙
読みきり短編漫画6本収録。少年・青年向け。
アイロス
「アイロス・ブラントの学園生活」600円
B5/64P/オンデマンド印刷/フルカラー表紙
学園ファンタジー少年漫画。
【装丁・デザイン協力】
「野良箱」発行物の装丁・表紙デザインの一部は、「NHKD the Manufacture」のXenkichiさんにお願いしてます。

テーマ:同人活動日記 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/11/14(土) 04:38:33|
  2. 同人誌・オフライン

伊藤計劃×円城塔「屍者の帝国」

【関連記事】
伊藤計劃「メタルギアソリッド ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」感想
伊藤計劃「虐殺器官」感想
伊藤計劃「ハーモニー」感想


【あらすじ】
フランケンシュタイン氏が最初のフランケンを生み出してから百年、死者蘇生技術は広まり、軍事や産業の分野で活用されていた。
ジョン・ワトソンは、ある日、エイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授の手引きでMらに面会、政府諜報機関の任務として、ロシア帝国が南進をするアフガニスタンの調査へ向かう。

【途中までネタバレなし感想】
既存のフィクションに登場するキャラクターが多数出てくるため、豪華で骨太なクロスオーバー二次創作小説という印象です。
ゲームでいうと、スマ/ブラやロボ/ット大戦のような趣があります。

文体や価値観、作風がかなり伊藤計劃らしかったので、大半を書いた様に見えましたが、実際には、第一章の前、プロローグまでだと読了後に知り驚きました。残りの全ては、円城塔氏作だったようです。

漢字にカナを振り外国語の音と意味を両方示すやりかたは以前から多用されています。
今回は、「霊素」「幽霊」を「スペクター」と表現してました。

主人公ワトソンは、探偵シャーロック・ホームズシリーズの相方、ワトソン君です。完全に同一人物とは言い切れないかもしれません。
Mは、007シリーズに登場するMI6長官の歴代名ですが、シャーロック・ホームズの兄、マイクロフト・ホームズとしても描かれています。彼は、イギリス秘密諜報部SISの前身組織で長官だったらしいです。ホームズ原作時点で。元ネタ自体がかぶってるのでまとめるのには良いですね。イニシャル同じですし。

計劃氏は、メタルギアソリッド(以下、MGS)のファンとして有名ですが、007の二次創作をやられてたことあります。しかも漫画です。絵がうまいです。
本作の、素体に擬似霊素をインストールし動かすというモチーフが同じなので、それを元に話を広げたのでしょうか。
伊藤計劃作 007まんが 「女王陛下の所有物」
上記のサイトを開いて上の段にあるファイルをクリックあるいはダウンロードすれば読めます。
なお、これは、ジェームズ・ボンドの役者が次々代わっていっても、同じキャラクターとして認識されている、というメタ・フィクション要素を、作中だけでも成立するようにしたSFとなっています。本家の007にはそんな設定ゼロなはずです。
「屍者の帝国」には「自立した物語」というワードが出てくるので、そこにも引っかかってきそうな要素です。
役者本人からしたら、自分の前後にあたるボンドを演じていないのに、自分であるはずのジェームズ・ボンドは過去にも未来にも存在し、自分と似たような性質を有し、周りからは同一人物として扱われているので。
「間諜」(スパイのこと)「幽霊」には両方「スプーク」とルビがふってあります。
今作品で諜報を扱ったのも、魂、霊魂と、スパイをかけているのでしょう。
作中では、屍者のような人間こそ諜報員の素質があるという描写があります。

屍はしばしば細かい判断ができない、という例として、日本の内乱サツマ・リベリオン、こと西南戦争での件が挙げられていました。
明治政府の屍兵団が、政府軍に偽装した反乱軍の田原坂通過を許してしまったのです。クリーチャーが旗を誤認したために起こった事件でした。
屍爆弾なんていうものもあります。歩く兵器で、人権の欠片もありません。消耗品です。言葉が話せません。弱いAIに似ているかもしれません。

屍者の傭兵や、それを操るソフトウェア(ネクロウェア)の輸出が行われています。
現実でいうと、昔のスイス傭兵や、武器・戦術を売る人に近いのでしょうか。

他のSFでも、いかに人間の労働や戦争を、ゾンビやロボットや人造人間に代理してもらうかというのがテーマになっていることが多いので、「働きたくないが人生を謳歌したい」という願望は世界共通なのかもしれません。なお、SFではそれが実現した後、大抵人類が滅亡するか、その危機に陥ります。

ナインチンゲールが屍者について提唱したフランケンシュタイン三原則は、物語内で的を射ていたことがわかります。彼女が提唱すべきだった(が違った)規則、として挙げられているものは、ロボット三原則のパロディになっています。

ロボット三原則の元ネタが出てくる小説
アイザック・アシモフ「われはロボット(Irobot)の感想 はこちら。

やはり、屍者は、非人間の奴隷労働階級としてのロボットという意味合いが強そうです。

ロボットの語源となった小説
カレル・チャペック「R・U・R(エル・ウー・エル)」の感想はこちら。
※ロボットを作るための手記が重要視されている所や、キリスト教モチーフになっている点、ロボットに見える人間、人間に見えるロボット、という点で本作とテーマが近い。機械ではなく、人造人間ともいうべき生体組織でできている。

ワトソン達が目指す「屍者の帝国」、そのトップと目されているのが、アレクセイ・カラマーゾフです。

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」感想はこちら

「カラマーゾフの兄弟」に登場する三男アリョーシャですね。カラマーゾフは未完ですが、続編では、何らかの経緯でアリョーシャが革命家になるとされていたようです。
温和で聞き分けのよい聖職関係の彼が何をどうやったら政治や闘争に向かうのか謎でしたが、本作で、表の歴史とともに仮想穴埋めがしてあります。
次男イヴァンが面白いことになっていました。
アリョーシャの師は、秘密結社の散り散りになった資料を集めていた人であり、フランケンシュタインに協力したことになっています。

屍者蘇生技術の書かれた手記の内容とは。また、それは本当に屍者蘇生について書かれているのか。
人間と動物を隔てるものとは、受け継がれるX(菌株)とは何なのか。
このあたりは、伊藤計劃さんらしい発想です。どこまでプロットがあったのかは不明ですし、文章化しているのは円城塔氏ですが。
作者二人の関係性自体が、「屍者の帝国」本編とリンクしています。

作中、妄想だと断りつつ、パンチカードは、読む人の欲望によって、見たいように見えるものではないか?という疑惑が書かれています。
本書でも下敷きになっている聖書もその類ではないでしょうか。どうとでも読めますし、ハイライトになるイベントだけでも、どこかしらに感情移入できそうです。また、人の願望が含まれているでしょう。
形状としては、音楽や、知らない言葉、と言ったインスト、抽象画、に近いかもしれません。これだ、という意味が分からないので。

ヒロインの美女ハダリーは、「未来のイヴ」という小説に出てくる人造人間であるらしいです。(未読)
「屍者の帝国」では、人形、従僕、奴隷、のイメージを己に対して持っている上、計算機のようで、他人に対して「あなたは魂を持っているのね」と話す不思議なキャラクターです。現在の二次元漫画・アニメ・ラノベに出てくる美少女、「俺の嫁」像の一つに近そうです。
彼女は、機械製のチェシャ猫のようだと表現されていました。

チェシャ猫の元ネタ 
ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」感想はこちら

他人の魂が本当に存在するとどうやって確かめるのか、世界に自分一人かしないと主張する者が二人いたら、独我論者として成り立たない、この考えは過去作にもあったように記憶しています。
突き詰めると、自分以外の人間には魂が入っていないので物と同じように、それらしく周囲の世界を形作っているということになってしまいます。
しかし、本当に確かめようがないんですよね。だからと言って、傷つけたり殺したりして良い、なんていう発想になったらどこかに幽閉しないといけません。
「あなただけが魂を持っています」と指摘するのは、魂を持たない者にもできる、という仮定は、計劃氏っぽくもあり、円城氏らしくもあります。

あらゆる文、音声、映像によって描かれた対象、思考というのは、屍者性を持っているように思えてきました。
何かの意志は表明した、喋った瞬間以外は全て過去に過ぎ去るのが当たり前なのでしょうが、人類は記録力を手にしたため、残り変容し拡散し、誰かが閲覧した時点で、それ自体はもう何の自我も持っていない、という状態が蔓延したように思えます。
時間差でコミュニケーションをとることすら可能です。
あとは、これが人の形をして人として新たに振舞えば屍者なんだと思います。
役に立つ、仕事をする、というハードルが高いですが、教育や娯楽、ニュースの面ではすでに実用化されています。

ヴァン・ヘルシング教授の言う「病理学の伝承的側面」では、吸血鬼はコレラの擬人化である可能性、「早すぎた埋葬」はカタレプシーの誤診で実際に何件か起きただろうと推測しています。
「伝承の病理学的側面」ではないと断っているということは、伝承が病理を表しているわけでも、病理のように伝染するのではなく、正しい病理の知識が形を変えて伝承していくということを表しているのでしょうか。

「早過ぎた埋葬」は、人の噂話でもありそうですが、小説家の名前も別の場所で出てきていることですし、これが元ネタだと思われます。 

エドガー・アラン・ポー「早過ぎた埋葬」感想を含むエントリーはこちら
注※他の短編のネタバレがあります。また、文体やノリが現在と違いますが、昔の私が書いてしまったのでそのままにします。耐え切れなくなったら適時上書きします。

【以下、ネタバレあり感想】
【“伊藤計劃×円城塔「屍者の帝国」”の続きを読む】

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2015/11/12(木) 23:01:09|
  2. 読書感想文(小説)

108万ヒットありがとうございました

コミティア114 新刊「日本語を覚えない父」サンプル

先ほど入稿しました。今日の朝9時が締めきりなので間に合ってよかったです。

表紙
tia114新刊表紙
 
裏表紙
tia114新刊裏表紙

本文
114新刊サンプル 

サークルカットに書いた「機械」要素は大幅に減りましたが、少しだけあります。

テーマ:創作・オリジナル - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/11/10(火) 02:30:25|
  2. 同人誌・オフライン

ティアズマガジン114のP&Rで紹介していただきました

発売中のコミティアカタログ兼ティアズマガジンVol.114のPush&Revewにて、当サークル「野良箱」がコミティア113で発行した「マシカの馬車」を取り上げていただきました。
また、北海道コミティア2で発行した「剥ぐ知能」も投票いただいており、ご感想、本当にありがとうございました!
大変励みになります。

11/4現在は、コミティア114に向けて新刊製作中です。(人物のペン入れが終わり、背景は真っ白。)
COMITIA プッシュ&レビュー感謝

今月11/15のコミティア114では、スペースナンバーP30b「野良箱」で参加します。
新刊として、同居しているけど言葉が通じない親子の漫画が出る予定です。よろしくお願いいたします。

テーマ:創作・オリジナル - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/11/04(水) 17:31:18|
  2. お知らせ・宣伝

アロエの花が咲きそう

アロエの蕾
アロエの茎が、不自然なほどまっすぐで、プラスチックの支柱みたいです。
サボテンの花
サボテン(?)の花、かわいい。

テーマ:サボテン・多肉植物・観葉植物 - ジャンル:趣味・実用

  1. 2015/11/03(火) 17:12:56|
  2. 日記

映画「KINGSMAN‐キングスマン‐」感想

【あらすじ】
洋服の仕立て屋「キングスマン」の裏の顔は、国際独立諜報機関だった。
所属するハリー(コリン・ファース)は、スーツに眼鏡、傘、指輪、ライター、ペンに模したさまざまな秘密兵器で戦うエージェントだ。
ある日、街のチンピラで無職の若者エグジー(タロン・エガートン)は、ハリーによって見出され、「キングスマン」の一員となるべく教育を受けることとなる。
IT長者ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)が企てる世界規模の陰謀を、「キングスマン」は、止めることはできるのか。

【途中までネタバレなし感想】
大変面白かったです。最後の方は、ずっとニコニコ顔で見てました。こんなので笑ってしまうのだから、人間の心にはあらかじめ残酷なものを楽しみエキサイトする回路がセットされているのかもしれません。

スーツの男性が紳士的に派手な戦闘アクションをするのが見たい人にはぜひおすすめです。

映像、美術、演技、音楽に申し分なく、そういった点に関するマイナス事項がないためストレスを感じないまま多くのアクションを楽しむことができました。

R指定で痛そうな場面はありますが、感覚が麻痺したので、もっとやれ、という気持ちになりました。

マイ・フェア・ジェントルマン。服装の重要性を改めて認識。
スーツをフルオーダーしてみたくなります。

ハリーは、エグジーの亡き父親と旧友なので、二人は擬似親子に見えます。
本編の途中で気付いたのですが、予告に映っているエグジーを、完全にハリーと見間違えていたことが判明しました。
記号性の強さもありますが、立ち居振る舞いが(カメラに映った角度もあいまって)、そっくりだったのです。

デバイスの表現は、タッチパネル式の操作が主流でした。
国内外問わず、映像作品に登場する科学捜査班やスパイのつかうガジェットは、操作のたびにやたら効果音がします。
もし本当にこのような諜報部が存在したら、わざわざ事あるごとに電子音など出さず、余計なエフェクトもつけないと思いますが、この映画は、既存の、特に昔のワクワクするようなスパイ作品を引き合いに出したオマージュになっていましたから、ちょっとバカなくらい突き抜けた方が、楽しいかっこよさが出てくるのでしょう。
子供が憧れ真似したくなるような面白さです。R指定なので見ることを推奨されていはいませんが。

コンピュータやサイバー空間、ITの表現といえば、緑色のちらついた半透明の映像、一文字ずつ高速でタイプライターのように表示されていく文章、と、どこかで相場が決まっていたようです。

マーリンやアーサー、ランスロット、ガラハッドというネーミングから、「アーサー王と円卓の騎士」をモチーフにしていることは分かるのですが、元ネタに詳しくないため、各配役との関係性は読み取れませんでした。
昔見たディズニーの「王様の剣」というアニメ映画では、マーリンは魔法使いでした。
今作でのマーリンは、「キングスマン」の頭脳、ハッキング、操縦、通信、戦闘、人事、新人教育担当のスキンヘッドでした。
007のQに服装と立場が似ています。

やたら金属質な足音の両足義足美女ガゼルは、その義足自体が鋭利な刃物でありエゲツない戦いをしますが、常に上品で冷静です。
ストレートの黒髪や、メイド服を極限までシンプルにし喪服も兼ねたようなパンツルックもあいまって存在感がありました。
誰もその容姿につっこまず、奇抜さに言及しなかったので、偏見の少ない寛容な世界なのかもしれません。
彼女の場合、生活の上では何不自由なく、機能としては生身よりパワーアップしていますし。

英国的な紳士服、アクセサリーの正反対として配置されているのが、アディダスのジャージ、野球帽、スタジャン、スニーカー、その他ヒップホップ系・B系ファッションなのだと思います。
エグジーとヴァレンタインは、服だけ見ると同じ勢力です。

リミッター解除の色気と爆発の浪漫は、適切に抑制が効いているからこそなのかもしれません。

 kingsman


【以下、ネタバレあり感想】
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  1. 2015/11/03(火) 04:32:53|
  2. 映画感想

合山究「中国の古典 清代清言集」感想

【概要】
中国最後の王朝清代のアフォリズムを原文と日本語訳(※)の併記で編集した本。
※現代語訳、かな交じり書き下し文の二種。

【感想】
古典というわりに、日本でいう江戸時代初期~明治末期に該当する、思いのほか新しい小品群でした。

当時は、膨大な数の無名な作家によるアフォリズムが発生しては、後に残らず消えましたが、わざわざ収集していた人がいたお陰で、その一部を今日でも読むことができるようです。

アフォリズムというのは、警句、名言、金言、格言、風刺の類である短文のことを指します。

人との付き合い方や哲学、心得、といったいかにも役に立ちそうな作品の中に混じった、以下の文がもっともインパクトありました。

誰かのあげている凧の糸が切れるのを見ている。なんと愉快なことではないか。

教訓は感じられないし、意味が分からないけど、勢いと、臨場感、鮮やかさがあります。
不亦快哉(また快ならずや。→なんと愉快なことではないか。)が末尾につくシリーズがたくさんあります。
何度も黙読すると具合が悪くなりそうなのでその部分だけ読み飛ばそうと試みましたが半分くらい失敗しました。
似たような形式の作品には、「なんと哀しいことではないか。」で締められるものもあります。

蟹を煮ると、蟹が釜の中で、がさがさと音をたてる。なんと哀しいことではないか。

たしかに哀しいですが、なんでわざわざ文章にしたのか着眼点がおかしいので気に入りました。

原文に含まれる単語の訳は、一作品ごとに解説されています。
字面だけみて直訳したらまるで意味を取り違えそうなものがありました。

機械―悪だくみ。悪賢い。ペテン師。策謀家。
工夫―時間、暇。
実際―最も充実した状態。充実感のあること。
痴―とりこになる。夢中になる。
青山―墓地。
要死、快哉―若い女性がよく口にする「まあ、いやあねエ」などに近い言葉である。直訳では、「死んだら、うれしいわ」の意であるがそんな意味ではない。

漢字一文字ずつについて意味やニュアンスを知っている分、その組み合わせで日本語とは微妙にズレた訳になっていると楽しいです。
「解語花」は、言葉のしゃべれる花、美人のこと。とありましたが、娼婦、芸妓、遊女をあらわしていることが多いみたいです。
「摩登」は、モダン(modern)の音訳です。カタカナがないので外来語に漢字を当てるんですね。
こちらとよく似た派生をしている言葉としては「料理」がありました。物事をかたづける、処理する、ということを表現しています。
食事を作ることではなく、「さて、こいつをどう料理してやろうかな」という使い方だと思えばしっくりきます。

これまでの説明だと何の本だか分からないでしょうから、以下、アフォリズムらしいものを引用します。

歌は舞の声であり、舞は歌の形である。

徳を身につけるのは、いつも困窮の中においてであり、身をほろぼすのは、しばしば志を遂げたことによる。

有形の落し穴は獣を捕えるだけであるが、無形の落し穴は人を害(そこな)うのに十分である。

英雄物語は一服の興奮剤であり、聖賢の箴言は貴重な処方箋である。

董偶は、弟子たちが勉強する時間のないのに大変悩んでいるのを見て、次のようにいった。「三つの余りを利用しなさい。冬は一年の余りです。雨の日は晴れた日の余りです。夜は昼の余りです。」と。

他、美人を題材にした作品が多かったです。ラッキースケベで腿や裸を偶然のぞいてしまったというものから、自然に例えた詩的なものまでさまざまです。

時代や国、文化背景が違っても、人々の考えることはそう変わらないということが分かりました。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2015/11/01(日) 22:25:54|
  2. 読書感想文(小説)

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