野良箱

同人漫画サークル

遠藤周作「海と毒薬」

海と毒薬 (講談社文庫)海と毒薬 (講談社文庫)
(1971/06/21)
遠藤 周作

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【あらすじ】
戦時中、とある病院で、アメリカ兵捕虜を生体解剖して殺すという事件が起こった。
非人道的な行為に至るまでの、各人の立場と心の動きはどういったものだったのか。

【途中までネタバレなし感想】
導入部は、肺病患者の視点で描かれているので、物語に入りやすかったです。
勝呂医師の怪しい容貌、勝呂に治療を受けることの不安などが描かれており、その患者と一緒に、「この勝呂という医者は何者なんだ?」と興味を持つことができました。

そこから、時間は戻って本題です。

生体解剖をするきっかけは、病院内の権力争いか何かだったようですが、参加した医者や看護士は、それぞれ別の動機を抱えていました。手術に立ち会う動機すらなかったような人もいます。

心理描写がすさまじかったです。はじめて受け持った患者を亡くし何もかもがどうにもよくなった男。子供を死産し夫と別れ、幸せな西洋女に嫉妬する女。数々の罪を犯してきたのに、社会的罰の脅威が消えると不安も良心の呵責もなくなってしまう男。
ぴったりと「この人は私と同じだ。」もしくは、「似てる。この気持ち分かる。」という人はいなかったのですが、その気持ちを大変リアリティを持って感じることができました。
論理的、感情的に、登場人物の内心が書かれているのですが、もし自分がこの立場でこの状況になったら、そう考えるのかもしれないな、と。

生体解剖のシーンは、一旦すっとばされますが、もう一度丹念に描かれます。
グロテスクですが、目を背けるほどではありません。

もっとこう、人間の命を使った実験をするからには、不謹慎な高揚感とか色々あると思ったんですが、予想外な雰囲気になりましたね。

【以下、ネタバレあり感想】
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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/08/31(火) 23:47:21|
  2. 読書感想文(小説)

万城目学「鴨川ホルモー」(原作小説)感想

鴨川ホルモー (角川文庫)鴨川ホルモー (角川文庫)
(2009/02/25)
万城目 学

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【あらすじ】
京都大学新入生の安倍は、友人の高村とともに「京大青竜会」なる謎のサークルに勧誘される。
コンパで早良京子の鼻に一目ぼれした安倍は、そのままサークル活動に顔を出し続けた。
一見普通の野外活動をする「京大青竜会」だったが、ある日、組織の本当の目的と「ホルモー」なる競技の存在を知ることになる。

【途中までネタバレなし感想】
「若者が変わったスポーツをする話らしい」というあやふやな事前情報のみで買いました。

主人公の安倍が、さだまさしファンで、さださんのことを「まさし」と呼ぶのが面白かったです。

メイン、もしくは、サブのヒロインが、凡ちゃんこと楠木ふみという女の子なんですけど、大変萌えキャラでした。ライトノベルやアニメのキャラクターのようです。それにしては、見た目がモサいですが。
無口クール眼鏡少女ということで、セリフが長門有希の声で脳内再生されました。属性的には「素直クール」に近い何かかもしれません。

主人公サイドは、非モテダサキャラが多くそちらに感情移入するように書かれていたと思います。
一方、リア充な上に若干性格に難のあるキャラクター達もいて、対照的です。
どちらのグループにも、ホルモーの才能に長けた人物がいて、それらがぶつかり合うのが面白かったです。
三国志や日本の戦国武将になぞらえてある部分もあるので、そういうのが好きな人にはイメージしやすい戦いになっていると思います。私は存じませんが。「死せる孔明~」は聞いたことあります。

「ホルモー」という架空の競技を題材にはしていますが、若者の普遍的な葛藤が独創的に描かれていて、面白かったです。

【以下、ネタバレあり感想】
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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2010/08/21(土) 16:59:43|
  2. 読書感想文(小説)

ラブプラス・ラブプラス+関連のらくがき

絵チャットで描いたラブプラス絵を載せていきます。

初描き寧々さん
capture初寧々

デフォルトの髪型です。「てるくん」は、当時の呼ばれ方です。

旅行寧々さん
capture 浴衣寧々

旅行時の寧々さんが、旅館で浴衣を着ているところです。
髪型はショートでした。

旅行リンコ
capture 旅行リンコ

旅行時のリンコです。
髪型はショートでした。今現在もこの髪型で、とてもかわいいです。

今後リンコにして欲しい髪型
captureリンコヘアカタログ

リンコが今度のデートで髪色を変えてくるそうで、髪色変更は、全キャラ通してはじめてです。(3人とお付き合い中)
そのようなわけで、リンコにやって欲しい髪型をシミュレーションしました。

愛花はまだ描いた事ないです。太めの眉毛が特徴ですね。

テーマ:ラブプラス+ - ジャンル:ゲーム

  1. 2010/08/11(水) 21:43:35|
  2. ゲーム

スティーヴン・キャネル「マフィアをはめろ!(原題:King Con)」

マフィアをはめろ! (SHOGAKUKAN MYSTERY)マフィアをはめろ! (SHOGAKUKAN MYSTERY)
(2002/07)
スティーヴン キャネル

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【あらすじ】
詐欺王(キング・コン)のビーノは、カードでイカサマしたあと、駐車場でギャングのボス、ジョー・リーナにゴルフ・クラブでボコボコにされた。
一命は取り留めたが、ジョー・リーナは、ビーノを仕留める為に殺し屋を雇ったらしい。ビーノは、病院を抜け出す。
一方、女性検事ヴィトリア・ハートは、ジョー・リーナを駐車場での暴行罪で有罪にするべく、目撃証人キャロル・セズニックという女性看護士をかくまっていた。
しかし、キャロルは、ジョー・リーナの兄であるトミー・リーナ一派に殺害されてしまう。
キャロル・セズニックは、ビーノの愛するいとこであり、ヴィクトリア・ハートの友達であった。
二人は、詐欺でリーナ兄弟に復讐することにする。

【ネタバレなし感想】
開始早々ヴァイオレンスなお話です。
スラングや罵倒語が沢山出てきます。
暴力、犯罪、麻薬などの描写度合いから言ってR-15くらいの内容でしょうか。

ビーノの一族、ベイツ家は、ほぼ全員がイカサマやインチキ、屋根の葺き替え詐欺などに携わっています。
ビーノの行う詐欺は、実に多種多様で、それを見ているだけでも楽しかったです。

石油詐欺、経済詐欺、お犬様作戦(犬を血統のよいものに見せかける)、宝石詐欺、財布落とし、証券詐欺、なりすまし、ペーパー企業の悪用、文書偽造、名簿の一部書き換えなど。

カジノでのイカサマだけでも色んなな方法があるのですね。
作者がどれほど取材したのか、また、どこまでが現実にも行われていることなのかわかりませんが興味深かったです。

複数人で詐欺をする時の役割分担にも独特の専門用語が出てきます。
登場人物が皆、演技派です。

堅物検事のヴィクトリアも、他人を演じ、人を騙すスリルにはまっていきます。

橋や会社を騙して売りつけるってすごいですね。

「手放すことで獲得し、引き算で足し算をして、割り算で掛け算をする」という逆説的な言葉が出てきます。
確かに、まずは一見損な手を打ちます。しかも本当に身銭を切ります。
しかし、最終的には、こちらが儲けるように上手く相手を誘導するのです。人の欲につけ込むのが上手いです。

ビーノの飼い犬ロジャーは、大変賢く、詐欺行為を強力にサポートしてくれます。
この犬、どうか最後まで無事であってくれ、と祈りながら読み進めていましたが、途中で、銃弾を浴びてしまいました。Oh…。

知的詐欺が多いので、難解な部分もありますが、それらしい口実として読み飛ばしても問題はないかと思います。

サイコロの細工に使った、セロファン・ガスなる物質は実在するんですかね。ネット検索した所、なさそうでしたけど。

詐欺のメインターゲットは、マフィアのドンの兄、トミー・リーナです。
彼を騙して金を巻き上げ、その上、弟ジョー・リーナからの信頼をなくさせます。
リーナ兄弟を仲違いさせるのが目的です。
そうすることで、兄トミー・リーナに、弟の裁判で不利な証言をさせるのです。

トミー・リーナは、狂った暴力的な男で、キレたら手を付けられません。その上、極度の女好きです。
大変嫌な奴なので、早く騙されて欲しいと思うと同時に、弟にボスの座を取られて当たり前だと割り切っているはずこの人生、周りから弟に劣ると扱われ、当の弟にも呆れられているこの現状を、汚名返上とばかりに頑張っている姿がかわいそうでもありました。その想いが強まるほど、ビーノサイドの詐欺に、はまっていくのです。
終盤のトミーからは、「弟よ、兄ちゃんだってこんなに自分ひとりで金を儲けられるんだぜ。」「褒めて欲しい、認めて欲しい」といった気持ちを感じ、哀れでした。
それに大して弟ジョーが全く取り合わないで怒っている所も悲惨です。冷静で正しいのはジョーなんですけど。

終わり方が綺麗でした。キャロルの弔い戦だったと考えれば、ベストな選択をしたと思います。

テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2010/08/08(日) 09:58:12|
  2. 読書感想文(小説)

ルイス・キャロル「鏡の国のアリス」 安井泉=訳・解説

鏡の国のアリス鏡の国のアリス
(2005/12)
ルイス キャロル

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【あらすじ】
飼い猫ダイナの二匹の子猫のうち、黒猫の方と遊んでいたアリスは、鏡を通りぬけて別世界に迷い込む。
しゃべる花の園を歩いていると、初対面時より大きくなった赤の女王(チェスの駒)が話しかけてきた。
見渡す限りの平野は格子状になっており、それは巨大なチェス盤だった。
アリスは、白のポーンとして参加することになる。
道筋とそこで起ることは赤の女王があらかじめ教えてくれた。

【途中までネタバレなし感想】
「不思議の〜」よりは、とりとめなくはないです。

読み返してみると、冒頭から伏線が散りばめられており、しっかりとした構成になっています。
全体の流れがチェスのゲームをなぞっているようです。
私は、ルールが全く分からないのですが。

物語は、序盤で赤の女王が言った通りに展開するため、行き当たりばったりではありません。

チェス盤がそんなに大きいとは思っていなかったので、「3マス目では汽車を使う」と聞いた時は「??」となりました。

この本に出てきた造語は、生物進化論や言語学にそのまま使われているそうです。
ありそうでなかった概念を上手く言葉にしていたんでしょうね。

赤の女王は、「ここではじゃな、同じ場所にとどまるには、全速力で走り続けるしかないのじゃ。どこか別の場所に行きたいのなら、せめて全速力の二倍の速さで走らないとならぬのじゃ!」と言います。
たしかに、女王に手を引かれてさんざん走ったアリスは、さっきと同じ場所にいました。
そのわりに、そのエピソードの前後では、普通に移動しています。

アリスは、「君は、あそこで寝ている赤の王様が見ている夢の中の住人だ」という意のことを言われてしまいます。
夢を見ている(かもしれない)主が世界の外にいて認識できないのではなく、目の前にいるというのが奇妙です。

この物語の中で一番悪夢っぽい描写だと思ったのが、アリスがどの棚を一生懸命見ても、目をやった棚がいつも空で、その周りの棚には物が溢れている、という箇所です。

ハンプティダンプティとその詩は、アリスが初出ではなく、イギリスの子供にはおなじみの伝統キャラクターであるようです。
その詩どおりにハンプティダンプティは塀から落ちて壊れたか死んだかした模様です。

アリス、ジャバーウォックと戦わないんですね。出会いもしません。詩の中に登場するだけの生き物なんですね。
今年公開された映画と全く違います。あれだけクリーチャーらしい生物出しといて、主人公と接触させないとか、珍しい作話法かもしれません。

大工とセイウチの話ですが、「食べられた牡蠣がかわいそうだ…」と涙目のセイウチの方が、たくさん牡蠣を食べていたっていうところが、何か、現実にもそういうことあるよね、と思いました。

アリスがプティングを切り分けた時に、プディングが「このわしが、あんたから一切れ切り取ったとしたら、あんたどう思うかね。まったく、この恥知らずが!」と言うのですが、漫画「あずまんが大王」の「ちよちゃんのお父さん帽子」(榊さんが見た夢)を思い出しました。

白の女王さまが「未来の記憶」を持っているというのが面白かったです。さも当たり前に、「それは、再来週に起ったことよ」などと言います。
未来人なわけでも、予知能力を持っているわけでもありません。記憶が過去と未来両方に働くというだけなのです。

【以下、ネタバレあり感想】
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テーマ:小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/08/08(日) 08:57:12|
  2. 読書感想文(小説)

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